日々是ジャグリング

ジャグリングを通じて感じたこと考えたことを綴っていきます。

陽気なGODが地球を回す(ジャグリング的な意味で)―IaKOT第4回公演感想

どうも、ゴ~チョです。

さる5月21日(日)、名古屋にてIaKOT第4回公演を観てきたので感想を書きます。
「シアターパフォーマンスラボ」という、住宅街に突然現れる小屋にて18:30開演。約90分の上演でした。

www46.atwiki.jp

全体の構成、演出について

神様と辿るジャグリングの歴史?

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人類とジャグリングとの歴史を神様の視点から辿っていくという演出。
基本的にはオムニバス構成で各人がルーチンを披露していくスタイルでした。それを合間のナレーションと「神様」によってつなぎ合わせ、一貫した世界観を作っています。淡々としたナレーションで史実にしれっとジョークを織り交ぜながら、中世、江戸、明治、昭和、平成とその時代をイメージしたルーチンが披露されていきます。連続してルーチンを見せるオムニバス形式は、ともすれば疲れてしまいがちなのですが、どこか脱力ぎみのナレーションと合間の小ネタによってメリハリがつき、約90分間最後まで楽しめました。

素直な拍手が生まれた『ギリギリチャレンジ』

演目同士を緩やかにつなぐストーリーと、もう一つ特徴的な演出だったのが、「明治」と「昭和」の間に挟まれた『みにげえむ』もとい『第441回ジャグリングギリギリマスター(架空の数値にはジャグラブルな値を入れたくなるジャグラーの性よ...)です。

これは、下記の3種目をそれぞれ演者が挑戦し、任意に客上げされた観客にその「ギリギリ」を予想してもらう(当たったら景品つき)という企画でした。

  1. ギリギリ高さピルエット:3ボール3upピルエットのトスの低さのギリギリ。
  2. ギリギリリングわんこそば:一定時間内に首に掛けることができるリングの枚数のギリギリ。
  3. ギリギリシガーピルエット:シガーボックスの最大面を重ねた状態(僕は勝手に『アコーディオン』と呼んでいます)からのピルエットで保持できる個数のギリギリ。

以前の記事で、「不確定要素が連続公演のリピーターを生む」といったようなことは書きました。

 

juggling-gohcho.hateblo.jp

 

しかしこの『第441回ジャグリングギリギリマスター』は、ただでさえ不確定要素たるジャグリング公演に、さらに不確定要素を持ち込むという、勇断とも暴挙ともとれる企画です(これ演者は楽しいけど進行役のMCが大変なやつや......)

 

蓋を開ければこの企画は勇断の方、むしろ英断でした。
実はルーチンだと、安定を狙うがゆえに能力の限界ギリギリの技は入れずにその一歩二歩手前で抑えるのが普通です。つまり言い方は悪いですが演者の実力の80%程度しか見られません。一方でこの企画は文字通り演者の「ギリギリ」を見せるわけですから、純粋に演者の100%を観て楽しむことができました。心なしか会場の拍手も暗黙の強要からではなく素直だった気がします。

個々の演者について

ほーしんさん(デビルスティック)

オープニングアクト。僕の眼が悪いせいで、彼が頭につけているものが「猫耳」だと気づくのに時間がかかりました(もう少し耳の大きいやつがよかったな)。寝起きの「のび」から始まり、『猫ふんじゃった』に合わせて操られるデビルスティック。客席を熱しすぎず冷ましすぎず、本編と関係ありそうでなさそうな演出で、オープニングアクトとして絶妙な仕事ぶりだったと思います。裸足だったのは猫だったからかな。


ねこふんじゃった | Black Cat Ballad

ティフみんさん(シガーボックス)

中世の、豊穣を祈る儀式としてのシガーボックス。イントロで某狩猟民族が頭を掠めましたが、あくまで農耕民族のイメージです。会場内の扇風機の影響か、やや不安定でしたが難易度の高いストールやスイング系の技を決めていました。裸足だったのは祭事のためかな(フットストールのためでしょう)。


姫神 神々の詩(海流バージョン) kamigaminouta (kairyuba-jon)

釜鳴さん(ボール)

あなたも裸足か。裸足だとピルエットしにくそうな床で、それでもガンガン回ってました。演者の中では最年長(?)ながら、おそらく最も運動量が多い、スカッとするルーチンでした。そして『ギリギリマスター』で魅せた180cm以下の低空ピルエット。2015年の『Puerta』公演で披露した30秒連続ピルエット記録ともあいまって、二つ名がつく日も近いのでは?

宿里さん(傘回し)

ここだけ世界観の完成度が異次元。衣装の和モダンな感じが良い(やっと演者が靴を履きました)。ボールを入れる藤カゴもお洒落。最後に大きく崩れてしまったのが残念でしたが、そこまでの技の安定感は素晴らしかったです。

山田さん(ディアボロ

さりげなく衣装がちゃんと昭和の芸人ぽいのが良いですね。そして抜群の操作性でした。Queenの疾走感ある曲ともあいまって、決め所でバチッと決まったときのカタルシスが尋常じゃない。


Queen - Don't Stop Me Now (Official Video)

やまけんさん(リング)

舞台上でリアルタイムにTwitterを投影していく、まさに平成の申し子のような演出。リングの面の使い方が多様で、立体的なルーチンでした。そして暗闇タイム。円形の道具にあえて直線的に蓄光テープを貼ることにより、暗闇の中で回転がより際立って綺麗に見えました。物理的地理的諸々の制約がかなえば、ジャグリング・ユニット・フラトレスの『プラネタリウムと望遠鏡』再演時にぜひ出演してほしいなと思いました。

松岡さん(惑星)

地球をジャグリングする神様。冒頭では決して落とせず、終盤では確実にかつ自然に落とさなければならない、という地味に難しい役割をさらっとこなす辺り、やはり神様なのでしょう。神様のせいではないのでしょうが、メクリの文字はもう少し高い位置にあったほうが読みやすかったなと思いました。

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竹内さん(MC)

良い意味で、ご自身の緊張が伝わらない落ち着いた語り口で、公演の雰囲気に合った緩やかな進行をしてくれていました。

肩肘張らずに観られる公演

このブログでこれまで紹介したどの公演とも違う雰囲気を持った(これは『名古屋風』と呼んでよいのか)日曜夜の空気にふさわしい良い感じに力の抜けた公演でした。こんなふうに肩肘張らずに観られる公演が、身近でもっと増えたらいいなと思います。なんならもっと短い30分で、平日夜とかに。

ひとつ次回への要望を出すなら、予定所要時間をチラシやHPに書いてほしかった。「オムニバス式でこの演者の数なら90分くらいかな」と、アタリはつけていましたが、帰る時間がざっくりとしか読めないので他県から観に来た組としてはちょっとヒヤヒヤしてたんです。次回と言えば、IaKOTの第5回公演は東京の団体『社会人ナイト』とのコラボだそうで、こちらも期待大です。

ではまた!