実り多きリハーサルのために
スマホRPG『メギド72』5周年おめでとうございます。ゴ~チョです。
それはさておき
ジャグリングに限らずパフォーマンス系のサークル・部活動に所属したことのある方ならば経験があるかと思いますが、本番ステージの前に何度か自分のパフォーマンスを部内で見せて改善点などを確認する「リハーサル」なるものがあります(団体によって呼び方は違うかもしれません)。今回はそのリハーサルについて書きたいと思います。
実り多きリハーサルのために
リハーサルのダメ出しが厳しいせいで後輩から怖がられていませんか?
逆に、リハーサルの議論が不活発すぎてただの儀式化していませんか?
ギスギスしたサークルになるのも嫌だけど、ゆるゆるナアナアすぎるのも組織としてどうかと思っているそこのあなた、リハーサルを有意義にするために頭の片隅に留めておくとよいかもしれないポイントを一緒に考えてみましょう。
つい言いすぎてしまう人へ
人格批評ではなく行為の問題点指摘を
後輩育成の思いが強すぎるのか、リハでもついダメ出しの言葉がきつくなってしまうこと、ありますよね。仕事で部下の育成がうまい人が気をつけていることのひとつとして、「褒めるときは人を主語に、叱るときは行為を主語に」が挙げられるそうです。褒めるときも叱るときも、とにかく相手の人格や存在を尊重すること。アメリカではこれを「acknowledgement」といって、コーチング、マネージングにおける重要技術として位置付けられているらしいです。日本語でもいくつか書籍が出ていたりします。
これをいざ実践するのはなかなか難しいことですが、例えば
「(君には)この曲は合ってない」
「(君は)ルーチン構成が雑」
というのではなく、そう感じる理由をもう少し掘り下げて
「この動きや佇まい、表情などが曲の雰囲気に合っていない」
「この技とあの技の順序や、ステージ上の立ち位置、動きの疎密はもう少し考えたほうがよい」
などと言い換えてみてはどうでしょうか。少し耳当たりが柔らかくなる気がしますね。
否定形ではなく比較級で伝え、相手に選択の余地を残す
例えば、決めポーズで伸ばした腕が下がっていて不格好だった場合、それをそのまま伝えて
「腕が下がってる(からダメ)」
と言われるよりも
「今思ってるよりも10cm腕を上げたほうが格好よくみえる」
と言われたほうが、やってみようかという気になります。
断定の否定文で意見を押し付けられるよりも、比較級で提案して最終的な選択は相手に委ねる。そうすれば(たとえ常識的にはその提案一択だとしても)、反感は生まれにくいでしょう。
褒めるコツ:「良い出し」は相手に興味をもたないとできない
ダメ出しの言い方を柔らかくしたところで指摘が多いと結局きつく聞こえてしまうのでは?
そんなときは、褒められる点も一緒に伝えて少しでも中和してみましょう。
おそらく芝居用語なので人口に膾炙した言葉ではありませんが、改善すべき点を指摘する「ダメ出し」の対義語として「良い出し」というものがあります。
「ダメ出し」とは言うなれば、自分の中にある理想像と現状とのギャップについて指摘することなので、パフォーマンスに関して大なり小なり持論のある人なら比較的容易にできてしまいます。
それに対して、相手の良かった点を評価する「良い出し」は相手に興味をもち、相手のことをよく観察していないとなかなかできません。褒めどころの見つけ方にもいくつかポイントがあるのでご紹介します。
同じレベル内で比較して少しでも突出している点を評価する
例えば、あなたの中の合格基準には達していないものの、同学年内では最もよくできていた点が相手にあった場合、そこを評価します。
(例)
「表情は1年生のなかで一番良い」
「このグループ内で一番お辞儀がきれい」
など
経時的変化・成長を評価する
同じレベル内でも特筆すべき点がどうしても見つからなかった場合は、同じ人物内の過去と現在で比較して良くなった点を評価しましょう。相手のパフォーマンスを見るのが今回で初めてでなければ可能ですね。ちゃんと覚えてないといけませんが。
(例)
「前と比べて動きがかなりきれいになった」
「前回リハで指摘したことをちゃんと改善してきててえらい」
など
試行錯誤の過程を(想像して)評価する
同期で抜きんでている点も前回からの改善も見いだせない(ツライ......)。あるいは相手のパフォーマンスを見るのが初めて。そんなときは、相手がそのパフォーマンスで何を意図して何を工夫しているのか、その試行錯誤を推し測ることができたなら(その結果はともかく)その努力は伝わった、ということを伝えましょう。(改善策を伝えるのはその後)
(例)
「この曲を表現しようと工夫しているのはよく伝わる」
「その技を効果的に見せたくて構成を考えているのがよくわかる」
など
何を言えばいいかわからなくなってしまう人へ
ダメ出しが厳しくなってしまう人とは対照的に、「なにか言うべきなんだけど何を言えばいいのかわからない」「自分なんかが言っていいのかわからない」と考えてしまう人もいると思います。そんな方には、ダメ出しに関する心構えと、批評の眼の鍛え方をご紹介します。
ダメ出しはディスりとは違う
リハーサルのダメ出しは相手のことを貶めるためにおこなういわゆる「ディスり(disrespect)」ではありません。あくまで相手のパフォーマンスをより良くするための一意見です。相手にとって耳の痛い言葉でも根底に相手へのrespectがあるならば、遠慮せず勇気をもって伝えるべきでしょう。後輩から先輩へも遠慮せず言うべきです。逆に先輩からのダメ出しであってもそこに相手へのrespectがないならそれは「ディスり」になってしまうので気をつけましょう。
自分が同じ曲・同じ道具で作るならどうするか考えてみる
「悪口になるのが怖いというより、そもそも改善点を見つけられるだけの批評眼を持ち合わせていない」という方は、観たパフォーマンスと同じ曲・同じ道具で自分が作るとしたらどうするかを考えてみましょう。曲のとらえ方や空間の使い方、構成の仕方に相手との差異を感じるはずです。ここで見つけた差異が、ダメ出しや良い出しの「種」になりますので、自分には批評眼がないと感じている方はまずこの差異を見つける練習をしていきましょう。
個人的にグッと来たポイントを伝える
見つけた差異が自分にとって「良い意外性」を持っていたとき。これは素直に感動ポイントとして伝えればよいと思います。
(例)
「この曲調で敢えてそのキャラクター性で演じるのは意外だったけどシュールな面白さがあってよかった」
「あの技からあんなにきれいに次の技につながると思わなかった」
など
あるいは逆に自分で作る場合にもこだわるであろうポイントに対して相手も同じように趣向を凝らしていたとき(オタク風に言えば「解釈一致」でしょうか)。このときは、先輩から後輩へ伝える場合はそのまま素直に伝えて「褒め」になりうるのですが、同期や先輩に伝える場合は偉そうに聞こえるときもあるので注意が必要です。
(例)
「ここで敢えてドヤ顔しないのは確かにそのとおりだと思う」
「サビ前のあの特徴的な音はぜひ拾ってほしかったのでちゃんと音ハメがあってうれしい」
など
違和感を持ったポイントの意図を尋ねる
改善すべき点として指摘するほどではないけれど、「なぜそこであんな動きをしたんだろう?」と疑問に思ったり違和感を覚えたりする点が見つかることもあるでしょう。そんなときは、その疑問や違和感の理由も添えて、相手にその意図を尋ねてみましょう。
相手に大した意図がなかったり、その意図があなたの納得できるものではなかった場合は改善すべき点として指摘すればよいですし、相手の説明であなたが膝を打つようなら、あなたの表現の引き出しはひとつ増えることになります。
最終的にみんなでよりよいものを作るために行うのがリハーサルですから、その目的が達せられるならば、第一声から完成されたダメ出しまたは良い出しを準備する必要はないのです。
パフォーマンスの巧拙ではなく安全面の観点で観てみる
それでも、パフォーマンスの巧拙に関して現時点ではさっぱりわからないというときは、完全に観客や舞台袖スタッフの気になって「安心して観られるか」という視点からそのパフォーマンスを評価してみてください。これ、パフォーマー同士だとつい技の難易度にテンションが上がって見過ごされがちな観点なので、意外と重要だったりします。
(例)
「あの技をその位置でやるとさすがに最前列への流れ弾が心配になる」
「道具をその方向に投げられると機材にぶつかりそうで怖い」
など
あとがき
......いろんなケースを網羅しようとしてちょっと長くなりすぎた気がします。全部読まなくても、自分が当てはまりそう、使えそうと思うところだけ読んで活用していただければ幸いです。ではまた。