日々是ジャグリング

ジャグリングを通じて感じたこと考えたことを綴っていきます。

ジャグラーは一度小林賢太郎作品を観よう―KAJALLA#2『裸の王様』感想

どうも、ゴ~チョです。

先日、小林賢太郎主宰のコント集団KAJALLAによる第二回公演『裸の王様』を観てきました。今回はその感想を書きます。公演にジャグリングが登場するわけではありませんが、ステージ上でジャグリングを絡めた公演を打とうとしている人には何らかのヒントを得てもらえるのではないかと思って書いていきます。(大層なこと言ってますが、ただ単にジャグラーにこの公演を紹介したいだけです)

 

まだツアー中ということもあり、コントのオチ部分や笑いの核になる内容は極力書かないように努めますが、一切のネタバレを嫌う方はそっとブラウザを閉じてください。そして、KAJALLA#2『裸の王様』を観てからまたこのページに戻ってきてください。コメント欄でおおいに語り合いましょう。

コントマンシップKAJALLA #2『裸の王様』

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幕間でも退屈させない工夫

『裸の王様』はオムニバス形式のコント作品群でした。K.K.P作品は一つの大きな物語の各所に笑いを散りばめた作りでしたが、KAJALLAではコントマンシップと冠するだけあって笑いの純度が高かったです。オムニバス公演やコント作品群の場合、幕間のセット切り替えでどうしても間が空いてしまいますよね。ある意味ここは観客の休憩時間。暗転した薄闇でうごめく人影は半分見ない振りをするのが暗黙の了解になっているかもしれませんが、『裸の王様』ではこの時間も目をそらすのはもったいない。シンプルな箱、木枠で構成されたセット群を積み木のように組み替えて、あるときははスツール、あるときはソファ、あるときはデスク、あるときはベッド、戸口になったかと思ったら次はコーナーロープ、次の場面が組みあがる過程を観るのも楽しいのです。組み替える途中に少し遊びを入れたりもするので、暗転したからといって気を抜いていると笑いどころをひとつ見逃したりします。

 

シンプルな箱を使った多様な表現はラーメンズの頃から顕著で、特に秀逸なのが『TOWER』の「名は体を表す」です。(この演目では幕間でなくコント中にガンガン組み替えてますが)


ラーメンズ『TOWER』より「名は体を表す」

 

アクシデンタルな演目がリピーターを呼ぶ?

映画やTVドラマと違って人がリアルタイムに動く演劇やコント作品は、毎回が一発勝負でやり直しが利かないというリスクをはらんでいます。人が演じている以上、厳密にまったく同じものというのは(映像作品として残すなら別ですが)二度とみられないとも言えます。しかし、その再現不可能性は逆に映画やTVドラマには出せない魅力たりうるのではないでしょうか。特に、笑いというのは予定調和を壊すことで生まれるともいわれていますから、コント公演において再現不可能性は大きな武器のひとつかもしれません。あえて台本を書かずに役者のアドリブに任せる「大喜利コーナー」とも呼べる時間を作るのです。『裸の王様』でも「ここ自由にやってるんだろうな、共演者ごと笑かせにかかっているな」と感じたところがありました。毎回違うものがみられそうなアクシデンタルな演目がひとつあると、「別の日程では何やるんだろう」という興味によって観客のリピート率が上がりやすくなるのではないでしょうか。


アクシデンタルという意味では、ジャグリングもその最たる例だといえます。この特性を上手く活かす方法を見つけられれば、舞台公演にジャグリングを取り入れる団体が増えるかもしれませんね。(実は小林さんと今回の共演者・久ヶ沢徹さんは『ロールシャッハ』という別作品で6リングパッシングを披露しています。既にジャグリングしてるじゃん!)

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他ジャンルへの興味の入り口としてのコント

『裸の王様』の中に、有名な狂言の作品からモチーフをとっている演目がありました。元ネタを知っていても知らなくても十分楽しめる内容でしたが、やはり元ネタを知っていた方がニヤッとできる箇所は多かったと思います。ラーメンズも含め小林さんのコント作品には文学作品など一見コントとは関係なさそうなジャンルの文化を背景に置くものがいくつかあります。そこには、自分の作品を入り口に他の芸能や文化活動への興味も広げてもらおうとする姿勢が窺えます。まるで「世の中にはコント以外にもたくさん面白いものがあるよ」と言われているようです。


銀河鉄道をモチーフにした作品


ラーメンズ『TEXT』より「銀河鉄道の夜のような夜」


●落語をパロディ化した「新噺」


ラーメンズ『ATOM』より「新噺」

 

古参のファンが喜ぶ「ネタのスターシステム

『裸の王様』にはラーメンズの頃からの古参ファンが喜ぶ小ネタが随所に散りばめられていた気がします。漫画家の手塚治虫がよく使った手法として、別作品の主人公を他の漫画のエキストラや別役で登場させるスターシステムというものがあります。『裸の王様』のそれはまさに「ネタのステーシステム」。今回特に感動したのが、ファンの間では大人気のあのキャラクターを再び見られたことです。決して初見さんを置いてけぼりにするような構成にはせず、それでいて、長く小林賢太郎作品に触れている人ほどニヤリとできる箇所が多い配慮は古参ファン(と自分でいうのはおこがましいですが)としてはありがたいことです。

 

※この辺の作品を見てから『裸の王様』を観るとより楽しめると思います。


ラーメンズ『home』より「ファン」

 

www.youtube.com

 


ラーメンズ『ALICE』より「バニー部」

 

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「おもしろい」の可能性を探求する人

以上、ジャグリングとほぼほぼ関係ない記事となりました。しかし、小林さんの「おもしろい」に対する探究心、観客を楽しませるための創意工夫は、コントの枠にとらわれずエンターテインメントに従事する人すべてに参考になるものなのではないかと思います。ジャグラーも然りです。
以前にこのブログで書籍を紹介した池田洋介さんも2009年のJJFワークショップで「小林賢太郎の作品が好きで、自分も影響を受けている」とお話されていました。

juggling-gohcho.hateblo.jp

 池田さんの作品が好きなジャグラーなら小林賢太郎作品もきっと好きになると思います。まだ観たことない人は是非一度。

ではまた!