どうも、ゴ~チョです。
今回で2桁突入10本目となる『ジャグ作』コーナーですが、10本目にして正統派ジャグリング漫画の登場です。
2017年5月26日発売の『ジャンプGIGA』に掲載された読切作品で、まだ単行本化はされていませんが、ここで紹介します。
神海英雄『バズルジャグル』
ジャンプGIGA 2017 vol.2 2017年 6/20 号 [雑誌]: 少年ジャンプ 増刊
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/05/26
- メディア: 雑誌
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吹奏楽漫画で有名な神海先生の読み切り作品
巻頭カラー50Pのジャグリング漫画を描いたのは、『SOUL CATCHER(S)』で異色の吹奏楽漫画を描いていた神海英雄先生です。読み切り掲載に乗じて3巻までKindle版が期間限定無料で読めます。
今回紹介する『バズルジャグル』にも『SOUL CATCHER(S)』の音羽 悟偉(おとわ さとい)というキャラクターがカメオ出演しています。ソルキャのファンの方はそういった意味でも要チェックです。
題名の読み間違えられ率が高いようですが、ネット上のコンテンツが爆発的に閲覧数を上げることを指す「Buzzる(ばずる)」とジャグリングの動詞形「juggle(じゃぐる)」を組み合わせて『バズルジャグル』になったものと思われます。
Buzzる+juggle=バズルジャグル
甲冑パーカーと天パが特徴的な主人公
主人公は16歳の高校生。動画投稿サイトにジャグリングの動画を投稿して「いいね」をねらうYoutuber的なことをしています。名前は「佐端ダイキ」。彼の得意とする道具のディアボロから「diabolo(スペイン語で"悪魔")⇒悪魔サタン⇒さたん」という連想からついた名前と思われます。活動の主体が大道芸ではなくネット動画というところがいかにも今っぽい。彼がなぜネット動画にこだわるのかは物語の終盤で明らかになるのですが、ネットにジャグリング動画を投稿して承認欲求を充足する様は現代アマチュアジャグラーの写し鏡のようですね。
さてこの主人公、ジャンプGIGA前号の掲載予告にてその天然パーマ風の髪型に注目が集まっていたようですが、いざ掲載されてみると髪型の印象は彼の服装のインパクトにかき消された模様。
細かいディテールは異なるものの、こんな甲冑パーカーを着てました。
主人公の尊敬するジャグラー「アーサー」と彼の得意技「エクスカリバー・ジェノサイド(神海先生が作ったのではなく実際にある技名です)」から騎士を連想してこの服装になったのでしょう。衣装のようにも見えるちょっと奇抜な私服を好むあたりもジャグラーっぽいといえばジャグラーっぽい。
ジャグラーの監修つき?リアルな技の描写
ジャグリングの描写がとても丁寧です。漫画的な演出(主人公がすごい跳躍、等)はあるものの、基本的にはフォームが変だとか道具の状態がおかしいといった不自然な画はありませんでした。「コンバット」の説明がさらっと入ったり、またその素材の活かし方もよく取材されているなと感じました。日本ディアボロ協会理事もお墨付きのようです。
バズルジャグル面白かったし、かなり正しい形でディアボロを取り上げて頂いたことに感謝しないといけない
— tsaito (@jugglersaito) 2017年5月26日
これは流石に誰かジャグラーの監修を受けているのでは?と思ったら実際、取材を受けたジャグラーさんがいたようですね。
対決の構図の作り方と勝因の可視化が見事
初めに「ジャンプ(正確にはジャンプGIGAでしたが)でジャグリング漫画が載る」と聞いたときは、「ジャグリングはどういったテイストで描かれるんだろう」と思っていました。ギャグ漫画はともかくとして、少年漫画、特にジャンプ漫画に欠かせないバトルの描写をジャグリングという題材でどう表現するのか、少し不安でした。というのも、最近では競技会など他人と競う場面も増えたもののジャグリングは基本的には「バトル」とは縁遠いもの。競技会にしても、競技者同士は直接ぶつかり合わないし、優劣が決するのは審査員の採点後なので一進一退のようなシーソーゲームは見せられません(そう考えると料理バトル漫画ってすごいですね)。
その点において、『バズルジャグル』では対決の構図の作り方が巧かったと思います。
- 同じ場所・同じ時間に同じギャラリーを背負ってジャグリングをする。
- 相手への妨害行為も可能(パフォーマンスに「コンバット」要素を追加)。
- 「いいねの数」という、定量かつリアルタイムに変動する指標を使った勝負。
これらによってジャグリング対決にダイナミックな動きと臨場感が加わりました。
そして、主人公の勝因「パフォーマーとしての心意気」(技術的にも優ってはいましたが)。気持ちの違いによって勝利という持っていきかた自体はよくあるやり方で、スッキリまとめた感はあります。見どころはその勝因のビジュアル化です。
「観客」という得体のしれないひと固まりを相手にするのではなく、観てくれる一人一人の気持ちと向き合うこと。
そのイメージを見開き2ページを使って大胆に描写しています。淡々とセリフだけで解説されるよりも、主人公の勝利に説得力をもたせていました。心理的イメージを多彩に描き出す表現手法は前作『SOUL CATCHER(S)』で培ったものなのかなと思います。
トッププレイヤーのノリの速さよ
アーサーを目指す pic.twitter.com/plpaGU5OTq
— Arata in Tokyo (@arata_urawa) 2017年5月26日
ちなみに先のツイート合わせて、話題の本日発売ジャンプギガ巻頭カラー作品「バズルジャグル」のモノマネでした。 https://t.co/OKVeRusOAB
— Arata in Tokyo (@arata_urawa) 2017年5月26日
こう見えて(どう見えているんだ?)、彼はディアボロ(主人公と同じ道具)では日本でも指折り、世界でも注目を集めるトッププレイヤーです。バズルジャグル掲載直後くらいのタイミングで、さっそくオマージュ動画を投稿しています。ジャグリング界は基本的にフットワーク軽めの人が多いですが、それでもこの反応の速さは『バズルジャグル』の反響の大きさを物語っているのではないでしょうか。
バズルジャグルをバズらせよう!
少年ジャンプに連載経験のある漫画家さんが、読み切りとはいえジャグリングを題材に作品を描いてくれたという事実は、ジャグリング界にとってかなり大きいと思います。読み切りでも話題が大きければ連載の話が持ち上がるかもしれません。
今こそジャグラーの組織票を総動員してジャグリング漫画の連載を応援しましょう!
ではまた!