日々是ジャグリング

ジャグリングを通じて感じたこと考えたことを綴っていきます。

クロ助さんはなぜ強いのか―シガーボックス大会2018感想

どうも、ゴ~チョです。
6月30日(土)に、大阪市港区の港区民センターにてシガーボックス大会が開催されました。
昨年に引き続き、審査員をしておりました。
今年の総エントリー者数は26名(うち棄権が1名)でした。昨年より3名多いですね。

昨年のシガーボックス大会の様子はこちらから

juggling-gohcho.hateblo.jp

 

昨年との変更点

審査員の分担制

審査員全員で4部門すべてを審査するのではなく、「男子ジュニア/女子ジュニア/女子総合」と「男子総合」で分担して審査するシステムになりました。おかげで昨年よりも審査員の負担は軽減されたように思います。同じ道具のルーチンを20名以上集中して見続けるのは流石にしんどいですからね。

最大最小除外方式を廃止

昨年の記事でも指摘したとおり、「最大最小除外方式」だと、全体的に高止まりで評価する審査員や、全体的に厳しめの点数をつける審査員の得点が全く反映されないという事態が起こりえます。(僕は一つのリスクを示したにすぎず、僕自身に審査方式の変更権限はありませんが)今年の審査からは「最大最小除外方式」は廃止されました。

評価項目別得点を公式が公開

昨年、僕がスプレッドシートであれやこれややっていたことを、主宰の応地さん自ら編集して大会公式サイトにアップロードしてくれています。しかも大会終了翌日に!仕事が速い!社会人の鑑です。

シガーボックス大会2018 審査シート 公開用.xlsx - Google ドライブ

全体の感想

クロ助さん3連覇

大会の結果については公式のサイトに掲載されておりますので詳しくは割愛しますが、

クロ助さん男子総合3連覇!!

間所さん女子総合2連覇!!

ぐちおさん、クロ助さん30代の星おふたりが男子総合ベスト3入り!!

昨年ジュニア優勝のえちぜんくんが男子総合準優勝!!

そして、男子ジュニア優勝の高柳くんは、一番得意なのはデビルスティックらしいですね。衝撃。
女子ジュニアはエントリー1名でしたが、それでも表彰に足る堂々の演技でした。普通に4シガーパートがある。衝撃。

去年と同じこと言いますね

実は辛口なことを言うと、感想としては概ね昨年と同じことを思ったんですよね。

juggling-gohcho.hateblo.jp

 

この大会に関して言えば、評価点が伸びやすい人というのは

  • 「この人と言えばこの技」というものがあること(新奇性、特有性)
  • ルーチンの完成度を上げるために練習以外にも時間と手間をかけていること(演出点)

この2点を充分に満たした人が順当に勝っていたんじゃないかと思います。
演出に関しては、審査員にも好きな演出・嫌いな演出はありますよ。ただ、充分に練られた完成度の高い演出には、(まっとうな審査員ならば)好悪を問わず高い演出点を付けざるを得ないんです。
加えて、ふと思ったのが、演出を本気で考えると「自分はこういうジャグリングをする者です」という自分のジャグリングの強調すべき点が見えてくるので新奇性が伝わりやすくなり、ジャグリングをしていないときの動作にも意図がつくので立ち回りが洗練されて操作安定性の点数も伸びやすいのでは...?ということ。もう一挙両得どころの騒ぎではないです。

クロスを禁止してもクロ助さんはきっと上位に来る

男子総合優勝のクロ助さんは言わずもがなクロスアーム系統の技を主体とした構成。そして今年は男子ジュニア部門優勝の高柳くんクロスアーム系統を主体とした構成でした。
「じゃあクロスアームやったら勝てるのか」
というとそうはならないでしょう。

既にその分野において大家になりつつあるクロ助さんに対して同じ武器で挑むことの難しさもありますが、たとえ次の大会で(まずありえないですが)「クロス技禁止」と言われても、クロ助さんはまた上位に食い込むルーチンを作ってくるのではないかと思います。クロス技に注目が集まりがちですが、クロ助さんの強さは大会に向けた戦略の緻密さにあります。
以前、ジャグリング座談会でクロ助さんから直接お話をうかがう機会がありました。

ジャグリング座談会@IKUukaN

個性や特色というものは“自由”な発想から生まれるものだと思いがちですが、クロ助さんの個性のひとつであるクロス系統への特化は“制限”から端を発しています。

限られた練習時間で学生ジャグラーと渡りあうにはどうしたら良いか考えたときに、クロ助さんは技の系統を限定して練習の効率を上げることにしたそうです。つまり「制約」ですね。パフォーマー名に「クロス」を入れたことにもその覚悟が見て取れます。もはや誓約です。「制約」「誓約」によってクロ助さんは、存在自体が演出になりうるハンターパフォーマーとしての強力な念能力を個性を手に入れました。

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努力値を振る分野を制限して更にそれを宣言することは、後に思わぬ副産物をもたらします。周囲のジャグラーが、会うたびにクロス系統の新しいアイディアを“無茶ぶり”という形で提供してくれるようになったといいます。

「制約」「誓約」そして周囲からの無茶ぶりによってさらに強固になった念能力もとい個性を、より強烈に表現するためにクロ助さんは、ジャグリングと直接関係ない部分にも最大限力を注ぎます。

昨年のJJFCSルーチンにおける音源編集も然り、

今年の衣装およびBGMも然り、

観客がBGM⇒衣装の順で認知するようにわざわざついたてを用意したことも然りです。

 

以上の理由から、たとえ次の大会で「クロス禁止」という制約を受けても、クロ助さんはその制約の中から再び強力な個性を生み出し、それを倍掛けするような演出を仕込んでくると思えてしまうのです。ジュニアの高柳くんも、メイン道具ではないという「制約」をうまく活かした構成(演出の練度も頭一つ抜けていた)ゆえの優勝と言えるかもしれません。

相手に勝つことを考えるとつい「自分に足りないものは何か」という思考にいたりがちですが、「相手が何を切り捨てたことによって強くなったか」を考えてみるのも一つの手段です。「ある種の制限が自由を生み出す」とは、かの池田洋介先生もJJF2013 in 静岡でのワークショップにておっしゃっていました。

クロ助さんに対抗するために、「クロス技を一切入れない」「シガーを横一列基底状態にしない」「ずっと座ったまま」のような制約を設けてルーチンを作ってみてもいいかもしれません。

キーワードは統一してください

シガーボックス大会も2018年で第7回となりました。遠方からの参加者も増え、長年安定して続いた(もちろん見かけ上の「安定」の陰には運営の絶え間ない努力があります)それなりに界隈ではネームバリューのある大会になりつつあります。

参加者の皆さんは、そんな大会で審査結果として提示された数字にひととおり一喜一憂しつつも、結局はひとつの評価軸に過ぎないことも頭の片隅に置いておいてほしいと思います。
喩えを使って言えば、あなたのジャグリンングの良さを測る単位はもしかしたら、「メートル」ではなく「グラム」や「リットル」なのかもしれないよ、ということです(逆に厳しいことを言えば、「メートル」で評価すると言ってるのに「リットル」押してきても点数伸びないに決まってるやろ、とも言えますが...)

あと、昨年も書きましたが大会の動画をアップロードしてる皆さん、まとめて検索しやすいように共通のキーワード決めておいてほしいなと思います(「箱大会」とか「シガーボックス大会」とか「シガー大会」とかタイトルバラバラで探すのに困る...)。

むしろ公式が指定すれば良いのかな?

ではまた!