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日々是ジャグリング

ジャグリングを通じて感じたこと考えたことを綴っていきます。

補追【感想】Juggling Story Project 第3回公演『春告鳥に花の香りを』

こんにちは、ゴ~チョです。

前回記事でJuggling Story Project 『春告鳥に花の香りを』
の感想を書いたのですが、少し書き忘れていたことがあったので
付け足します。

juggling-gohcho.hateblo.jp

 

前作と変わった点について(再度整理)

前回記事で触れた、第3回公演の変化をまとめると下記の3点です。

  • 声劇から有声劇
  • 「非日常の中の日常」から「日常の中の非日常」へ
  • 混在から住み分けへ

今回、さらに触れていきたいのは次の2点です。

  • 「テレビ中継」から「スタジアム観戦」へ
  • 暗転明転使用場面の絞り込み

以下、気づいたことを綴っていきます。

 

「テレビ中継」から「スタジアム観戦」へ

前作までのJSP作品は、頻繁に物語の場所が移動していた印象がありました。

一方、今作では物語の場所を思い切って「骨董屋の中」のみに絞りました。
モノの思念を表す「非日常」世界をカウントに入れると
厳密には一つではありませんが、「日常」側は一つです。
シーンが途切れる回数が少なくなったため
集中を切らすことなく物語を追うことができました。

 

この違いは、野球観戦で例えるなら
テレビ中継で観るのか、スタジアムに行って肉眼で観るのか
といった違いに近いかもしれません。

テレビ中継では、複数のカメラを活用して
様々なアングルに切り替えて映像を見せてくれます。
ベンチに座る監督の表情やブルペンの様子まで映します。
特定の選手にフォーカスして別途編集したエピソード映像を流す場合もあります。
とかく情報量が多いです。

スタジアム観戦では、得られる情報はリアルタイムに肉眼で見えるもののみです。
でも、却ってテレビ中継よりも集中して観ていませんか?
(機会として珍しく、もったいないから集中するという理由もありますが)

 

演劇も、視点は基本的に観客の肉眼のみです。
テレビ中継のように瞬間的な視点の切り替えはできません。
テレビ中継のような切り替えの連続を実現しようとすると
暗転明転を頻繁に繰り返さなければいけないでしょう。
演劇のシーンは「テレビ中継」よりも「スタジアム観戦」を
イメージして作る方がよいようです。

 

視点を絞ったおかげで、今作の物語の展開は非常にすっきりしました。

 

場所の選び方

物語の舞台を一つに絞りさえすれば、場所はどこでもよいのでしょうか。
今作では、物語の舞台の選択にも工夫があったように思います。
その工夫について書き出す前に、平田オリザ氏が書いた『演劇入門』から
「セミパブリックな空間」という概念を紹介します。

演劇入門 (講談社現代新書)

演劇入門 (講談社現代新書)

 

 そこで、私が一幕ものの舞台として選ぶのは、どうしても、プライベート(私的)な空間でもパブリック(公的)な空間でもない、半公的な場所となる。
 半公的と日本語で言うと、「反」公的と聞き間違えられることがあるので、これを口で説明するときには、「セミパブリックな空間」と私は呼んでいる(「セミパブリック」というのは私の造語だが、外国人と話すときでも、一応これで通じているようなので、間違った使い方ではないようだ)。
…(中略)…
 セミパブリックな空間とは、物語を構成する主要な一群、例えば家族というような核になる一群がそこにいて、そのいわば「内部」の人々に対して、「外部」の人々が出入り自由であるということが前提になる。

家族や慣れ親しんだ仲の人物同士のみがいるプライベートな空間では
持っている情報量の差が小さく
「会話」は弾みますが観客に有効な情報が伝わりません。
プライベートな会話で無理に情報を伝えようとすると
いわゆる「説明くさいセリフ」になります。
そして、道路や広場といったパブリックな空間では、そもそも会話が発生しません。
物語(特に一幕もの)の舞台としてちょうどいいのはセミパブリックな空間

 

今作の舞台である「骨董屋」は、まさしくこのセミパブリックな空間です。
下の図をご覧ください。

 

f:id:juggling-gohcho:20170312172820p:plain

 

「モノたち」を登場人物としてカウントすれば
客が入る前の骨董屋はプライベートな空間です。
モノたちと主人の「会話」だけでは物語は成り立ちません。
そこへ外部から少女が来ることで骨董屋はセミパブリックな空間に変わります。
少女と主人(あるいは少女とモノたち)の「対話」によって物語は展開していきます。

 

暗転明転使用場面の絞り込み

卵が先か鶏が先か、物語の舞台を一か所に絞ったおかげで
場所移動に伴う場面切り替えがなくなり
暗転明転を「日常」シーンと「非日常」シーンの切り替え
にのみ使えるようになりました。
そして今作において日常と非日常の切り替えは、同時に
会話優位シーンとジャグリング優位シーンの切り替えも意味しました。

 

これは個人の経験による体感でしかありませんが、
演劇を観るときに使う集中力とジャグリングのルーチンを観るときに使う集中力は
どうも違うのではないかという気がしています。

 

今作では、照明効果をうまく使って
観客の観るスイッチのスムーズな切り替えに成功したのではないでしょうか。

何にせよ、暗転明転の回数が減ったことで物語の「ブツ切り感」は解消されました。

 

王道パターンの発見

  • 日常の中の非日常構成
  • 話者とジャグラーの住み分け
  • セミパブリック空間の定点式
  • 暗転明転による観賞モード切替

今作でJSPが採用した上記の技法は、ジャグリングを含む有声劇を作るうえで
一つの王道になりうるのではないかと思います。
今後、他の団体でジャグリングを含む有声劇を作る際、有用な指針になるでしょう。
また、今回の記事で少し紹介した『演劇入門』という本は
演劇のシナリオを作ろうと思っているジャグラージャグラーじゃなくても)
一度目を通しておいて損はないと思います。

ではまた!

 

演劇入門 (講談社現代新書)

演劇入門 (講談社現代新書)