どうも、ゴ~チョです。
以前、ジャグリング検定について書いた記事にて『ボールジャグリング入門』という書籍を紹介しました。
ボールジャグリングについて体系的にまとめた書籍のなかで、数少ない日本語で読めるもののうちのひとつです(海外書籍の和訳版を除けば、唯一と言えるかもしれません)。
日本のジャグラーにとっては“バイブル”とも呼べるこの本ですが、初心者の方が読むとき少し気をつけておかなければならない3つの嘘(?)が含まれているので、ひとつずつ解説していきます。
『ボールジャグリング入門(第二版)』の3つの嘘?
嘘?①:実はバークスバラージじゃない
バークスバラージ(Burke's Barrage)は『ボールジャグリング入門』の第5章「ミルズメス」に収録されており、ミルズメスを覚えた後の派生技として紹介されています。かつてジャグリング検定4級の選択技でしたが、新ジャグリング検定では選択技から外されています。
書籍では、ボールを持った手(サイトスワップでいうところの“2”)を大きく回すパターンと、ボールの間を通すパターンの両方を紹介しており、どちらもバークスバラージであるとされています。紙面の割かれ方から察するに、どちらかというと大きく回すほうが基本バージョンであるような書き方です。
しかし、真にバークスバラージと呼べるのはボールの間を通すパターンのみで、手を外側に大きく回すほうの技はテイクアウト(take out)という名前の別の技なのだそうです。バークスバラージの発案者Ken Burke氏が直接やり方を教えている動画がYoutubeにありますが、確かにボールの間を通しています。
実はこの誤り、チャーリー・ダンシーの『ボールジャグリング百科』(僕が持っているのは2008年発行の翻訳版第3刷)にもあります。これにも大回し版がバークスバラージであると紹介されています。ジャグリング百科ではその後に正しいバークスバラージの方法も別バージョンとして紹介しており、こう続けています。
実は私自身、どちらのやり方が正しいバークの乱れ撃ちなのか知りません。まあ両方できるようにしておけば、間違いないでしょう。
Juggle Wikiのバークスバラージの項には、“『ボールジャグリング百科』の古い版では誤って載せていた”と書かれているので、『ボールジャグリング百科』の最新版ではこの部分は訂正されているのかもしれません。原書『Charlie Dancey's Encyclopaedia of Ball Juggling』の初版が1994年なので、『ボールジャグリング入門』もその影響を受けた可能性は高いです。
そのチャーリーの勘違いからそう呼ばれているのか真偽はわかりませんが、Take outは別名Charlie's Cheat(チャーリーの紛い物)とも呼ばれているらしいです。
嘘?②:そこにいるはずのない4人目の女性
こちらは嘘というより誤りに近いものです。
7章と8章の間のコラム「ジャグリングの歴史(世界編)」には、エジプトのとある壁画として下記のような挿絵が載っています。
ジャグリングをする4人の女性......よく見ると左側の3人はボールを3個扱っているのに対して右端の女性はボールを1個しか持っていません。ちょっと不自然ですね。実は3人並んでいるのが本当で、右端の女性だけは別の壁画に書かれていたのが論文発表時の印刷の誤りで合わさってしまったものらしいです。詳細は、Thom Wall著『Juggling - From Antiquity to the Middle Ages: the forgotten history of throwing and catching』(英語版のみ)に書かれています。
壁画の存在自体が嘘というわけではないので、古代のエジプトにボールを投げたり取ったりする遊びか儀式のようなものがあったことは事実のようです。
嘘?③:ジャグリング世界記録
こちらは嘘や誤りというよりも単に情報が更新されていないというだけですが、ジャグリングの世界記録について。紙面には2000年までの記録しか掲載されていませんが、2000年以降に更新された記録がたくさんあります。現在の公式世界記録はこちらです。
とはいえ、8ボール9ボールでAnthony Gatto氏がいまだ健在なのがすごいですね。
日本の公式記録はこちら。
古い書籍には良い面もある
ジャグリング自体の性質上、「文字や静止画で説明するより動画のほうが速い」ということで、ジャグリング関連の出版物はあまり多くありません。英語の出版物を見ると今もいくつか出続けているようですが、日本語に絞ると本当に少ないです。
そのため、日本語のジャグリング関連本はどうしても版が古く、情報も古いものがそのまま載っていることがあります。それに起因する嘘(というより誤り)を今回はご紹介しました。
ただ、流行り廃りの入れ替わりの激しいネットの世界では3年前の情報でも検索が難しかったり、投稿者の都合によりアクセスできなかったりといったことがある一方で、書籍では「こんなの実際にやってる人見たことないんだが......?」と思うようなマニアック技(腕組みフィニッシュとか)を消滅させずにいつもいつまでも参照できるという利点があるため、一概に書籍より動画がいいとは言い切れないとも思います。最近の動画ではあまり見かけない、書籍にしか載っていない技だけでルーチンを組んだら、一周回って新しいものが出来上がるかもしれませんね。
ではまた。