どうも、ゴ~チョです。
5月27日(土)に、大阪市港区の港区民センターにてシガーボックス大会が開催されました。以前の記事で「観に行きます」とぼやかしましたが、実は僕はギャラリーとしてではなく審査員の一人として観てました。
シガーボックス大会とは
「シガーボックスジャグリングの技術発展に寄与するために」と2012年から始まった、個人主催の大会です。主催者の活動拠点の関係上、例年大阪での開催となっています。とはいえ、東は関東、西は九州・沖縄まで全国各地から腕に覚えのある者が集まる大会です。部門は「男子ジュニア」「女子ジュニア」「男子総合」「女子総合」の4部門です。ジャグリング歴3年を区切りとして、ジュニアと総合に分かれています。今年の総エントリー者数は23名(うち棄権が1名)でした。
全体の感想
女子のレベルがすごく上がった
今回に関して言えば、男女の部門分けを取り払っても競技として成立したのではないかというくらいに女子部門がハイレベルでした。もともと競技人口の少ないところから、着々とレベルが上がってきています。そしてこれは偏見かもしれませんが、身のこなしや音楽の表現力は全体的に女子の方が優れている傾向があるなという印象です(個人的には女子総合部門の間所さんが、歌詞に「神社」というフレーズが出てくるタイミングでシガーボックスを鳥居に見立てて組んでいたところが好きです)。火力で追いつかれたらもうじきに食われるよ男子。心せよ。
「この人といえばこの技」というものを持ってる人は強い
今年で男子総合2連覇達成のクロ助さん(なんと社会人!)は前回前々回から積み重ねてきた自分のキャラクターを存分に活かしたストーリー性のあるルーティンでした(さすがにルーティン途中で喋っちゃうのは反則ではとも思いましたが、ルールに「喋るな」とは書いてなかったはずですし、面白かったのでセーフ)。審査員からの評価云々よりも(もちろんご本人はそれも気にしつつだとは思いますが)、まず観客をどれだけ楽しませられるかでルーティンを組んでいる姿勢が窺えて好感度が高いです。
- 男子総合1位のクロ助さんはクロスアーム系
- 2位のばやしさんは肘ストール系
- 男子ジュニア1位のえちぜんくんはスピニングシガー
- 2位のまえっち2くんは一夜城(技名です)
といったように、「この人といえばこの技」というものを印象付けられた人は強いな、と思いました。クロ助さんなんてもう、ステージネームからして何の技する人かを雄弁に物語っているんですからそりゃ強いですよね。
演出点が3割を占めることについて
今回のシガーボックス大会は(前回もそうだったかな?)全体の評価点に対して「演出点」が3割を占めていました。演出点は、衣装や選曲、技の構成に観客を魅了する創意工夫がみられるか、を評価する項目です。3割というのはなかなか大きなウェイトです。今回で言えば、技の難易度を評価する「技術点」と同じ割合でした。極端な話をすれば、技術点で多少劣っていても、演出点次第で逆転も可能ということです。演出点の割合については賛否両論あったりするのですが、一応、審査項目や配点は事前に主催側から公表されていましたし、エントリー者はその審査方法を承知の上で競い合うということになります。
それなのに、演出を凝らないのは本当にもったいない。
個人的見解ですが「演出点」というのはいわば「練習時間以外にどれだけそのルーティンの完成に対して時間をかけたか」を見るものだと思っています。「曲選びや曲の編集、衣装選び、ましてや小道具づくりなど、そんなものに時間をかけているくらいなら練習した方が良い」という意見もあるかと思います。でも、同じ最高級黒毛和牛でも、100均のエプロンをつけた猫背の人から紙皿にのせて供されるのと、ギャルソン風の身なりで姿勢のいい人から高そうなお皿で供されるのとでは、味まで変わってきそうですよね?
得点のつけ方と審査結果について
今回の大会の得点のつけ方は、簡単に書くと以下のとおりです。
- 審査員6名分の評価点のうち、最大得点と最少得点を除外する。
- 除外後の4名分の得点を合計し、そこから減点分を引いたものを最終得点とする。
上記のような「最大最小除外」方式の場合、特定の審査員が特定の選手に対して不自然に極端な点数をつける、いわゆる「えこひいき」は防ぐことができます。しかし、評価のレンジが広い場合(今回で言えば理論上は0~30)、全体的に高止まりで評価する審査員や、全体的に厳しめの点数をつける審査員の得点が全く反映されないという事態が起こりえます。今回はその現象が女子ジュニア、女子総合部門で顕著でした。
ちなみに、「偏差値」方式を採用したら
では、例えば「最大最小除外」方式ではなく「偏差値」方式だったらどうなっていたのでしょうか。
偏差値をとることで、審査員特有の点数の偏りを馴らすことができます。主催側から公開されている審査結果のデータがあります。
それをもとに、以下の方法で得点を再計算してみました。
- 審査員×部門ごとに、各審査員がつけた合計点の平均値、標準偏差を算出。
- 各選手の得点から偏差値を算出。
- 審査員6名分の偏差値を合計し、そこから減点分を引いたものを最終得点とする。
本当は全部門通じての審査員の平均値、標準偏差をとった方がいいのですが、審査員A~Fは部門ごとにシャッフルされていてどれが同一人物かわからないため、審査員×部門ごとに平均値、標準偏差をとりました。以下のリンクから「偏差値」方式の計算結果を閲覧できます(リンク先2シート目です)。
シガーボックス大会2017審査結果.xlsx - Google ドライブ
結果は、男子総合部門の5位~10位および女子ジュニア部門において公式順位との差異が生じたが、他は変化なし。でした。
今回に関して言えば、意外と揺るぎない審査結果だったということでしょうか。
女子ジュニア・総合についてはサンプルサイズn=2の偏差値なので、それはそれで問題あるのでは?という値になってしまっています。全部門通じての各審査員の平均値、標準偏差をとって偏差値を計算したらどうなるのか、気になるところです。
各選手の項目内訳
「実は1位の人に部分点では勝ってた人いるんじゃないの?」
ということで、計算してみました。下記のリンク先1シート目です。
シガーボックス大会2017審査結果.xlsx - Google ドライブ
表の右側「純粋合計」の欄に、「技術」「新奇」「操作」「演出」各項目の審査員6名分(最大最小の除外なし)の合計点を記入しています。
男子ジュニア部門は上位3名にきれいに各項目1位が分散されていて面白いですね。スピニングシガーで注目を集めたえちぜんくんですが、実は最も評価されているのは演出点。ミスによる減点が少なかったこともありますが、技の新奇性もさることながら、その見せ方がよかったといえます。女子ジュニア、女子総合部門も、必ずしも1位の選手が全項目で優っているというわけではないようです。男子総合部門で興味深いのは、今回惜しくも入賞を逃した松野 聖也さんが技術点においてトップであるということです。難易度を上げた分、ミスによる減点が痛手となりました。しかし、松野さんのミスがゼロだったとしても1位のクロ助さんとの得点差は28点。つ、強い...
今回の結果を受けて次へ
今回の記事にのせたリンク先の得点表は、ダウンロードしてエクセルで開けば他にも色々いじってデータを見ることも可能です。選手の皆さんには、自分の強みや弱みを分析して今後に活かしてもらえたらと思います(皆さん優秀なので既に分析・対策済みかも...)。それから、統計に強い方、「これじゃ計算方法まちがってるよ」等のご指摘あればおっしゃってください。
あと、大会の動画をアップロードしてる皆さん、まとめて検索しやすいように共通のキーワード決めておいてほしいなと思いました(「箱大会」とか「シガーボックス大会」とかタイトルバラバラで探すのに困る...)。
ではまた!