こんにちは、ゴ~チョです。
ふと過去に読んだ漫画でキャラクターのパワーアップについて
面白い描写があったのを思い出したので
読み返してみました。
雷句 誠『金色のガッシュ』を読み返してみた
術者とコンビを組む能力系バトル漫画
『金色のガッシュ』は少年サンデーに連載されていた雷句 誠先生の作品です。
以下、単行本のあらすじ欄から引用です。
人間界を舞台に千年に一度行われる、次の魔界の王を決める戦い。魔物の“力”を引き出す“本”を与えられた人間と魔物の子がコンビを組んで、生き残りをかけて戦うのがルールだ。
その100人の王候補の一人として、中学生・高嶺清麿(たかみねきよまろ)の家にやってきたガッシュ。二人の絆はしだいに深まり、「やさしい王様になる」という目標のもと成長を遂げていく。
「本」の適合者である人間が「本」に書かれた呪文を読むことで
魔物の子の力が解放されて、術が発動します。
個人的には、バトル漫画で技名を叫ぶ理由をうまく見つけた設定だなと思います。
人間が異形異能の生物を使って戦闘するという意味では、
デジモンとかポケモンに近いのかもしれません。
ただ、デジモンやポケモンが基本的に持ち主の指示通りに戦闘を行うのに対し
魔物の子はいつも人間の言いなりとは限りません。
魔物の子からしてみれば自分より能力の劣る人間などと組まずに
己のみの力で戦いたいところなのですが、
故郷の魔界とは違って人間界では「本」の適合者の力を借りなければ
自分たちの本来の力を出すことができないわけです。
そこで人間を脅して自分に従わせようとする魔物や
交換条件を提示して人間の協力をあおぐ魔物、
精神操作を試みる魔物まで現れます。
人間側にしてみても、
魔物の子に対して自分の亡き息子の面影を重ねる者や
単なる利害の一致から行動を共にする者
仕事のパートナーとして魔物を利用する者等
魔物に負けず劣らず個性に富んでいます。
魔物の子と人間は「本」を介したある種の契約関係にあり
その関係性はコンビによって様々であるところがこの作品の面白さの一つです。
(と言って、今回書きたいこととは直接関係ありませんが)
3行だけの「ザケル」と1ページ分の「ザケル」
「ザケル」とは主人公の魔物の子ガッシュの初級術です。
(作中では「第一の術」と言っています。)
適合者の人間も初めから「本」の中のすべての呪文が読めるわけではなく
読める部分だけが色が変わって見えており、
魔物の子の成長に合わせて読める呪文、使える術が増えていきます。
術の強さは呪文読み上げ時の感情の強さによって多少変化はするものの
基本的に術により一定です。
ところが、あるきっかけで術の強さが跳ね上がるという描写がありました。
27巻9ページの以下のコマをご覧ください。
「3行分のザケル」が「1ページ分のザケル」になったことで
強さが格段にアップしたとのことです。
同じ「ザケル」だが色が変わって見える文字の量が増えたことで
強力になったわけです。
僕はこの描写をみたとき、
ジャグリングにも似たような感覚はあるなと思いました。
技のクオリティと情報量について
寿司屋の腕前は玉子を握らせればわかる
などとよく言われますが、
ジャグリングの腕前はカスケードを見ればわかったりします。
トスジャグリングの基本中の基本と言ってもいい技であるカスケード。
ガッシュでいうところの「第一の術ザケル」みたいなものです。
同じカスケードでも初心者のそれと上級者のそれとでは
「3行分のザケル」と「1ページ分のザケル」ほど見た目の差があります。
同じ「ザケル」なのに色が変わって見える文字の量が増えると強力になる
とはつまり
同じ技でもその技に対する理解の深さや量によって技の質が上がる
ことのメタファーではないでしょうか。
「3行のカスケード」
=「技として成立する最低条件のみを満たしているカスケード」
「1ページのカスケード」
=「リズム、腕の角度、姿勢などその技の最も美しい形を体現できているカスケード」
呼んでしまえば同じ「カスケード」でも前者と後者では
意識できている(あるいは既に定着して無意識下でも体現できる)事項の多さ、
込められた情報の量というのは格段に違います。
そう考えたとき、自分が今「できている」と思っている技は
「3行分」の技でしょうか。「1ページ分」の技でしょうか。
ふと考えてしまいます。
ジャグリングに限らず
仕事や勉強においても「3行分」か「1ページ分」かは
初心者と上級者を分かつキーワードになりうるのではないかと思います。
作者の哲学が垣間見える漫画が好きです
キャラクターがかわいくてギャグも多め、低年齢の子にも楽しめるような作り
であるために見落とされがちですが、今回紹介した場面以外にも
『金色のガッシュ』は示唆に富んだエピソードを数多く含む漫画だと思います。
こういった、作者の哲学や考え方が嫌味ない形で垣間見える作品はいいですね。
個人的にはフォルゴレがキャンチョメに強さを説くシーンも好きです。
あと、ふざけたビジュアルの中学教師のいたって真面目な進路指導シーンとかも。
今後も、何か引っかかることがあれば、全然関係ない作品でも
ジャグラー的視点から考察を入れたりしていきます。
ではまた!